「自己陶酔タイプ」
私の横でレモネードを飲みながら、アカツキがつぶやく。
「自分の声しか聞いてないから、曲と合ってないんだよな」
アカツキの分析に、なるほど、とうなずいた。
肘を上げ、姿勢を低くして、マイクに口をくっつける勢いで歌っているセイ。音程は悪くなさそうなのに、少しずつ声と曲がずれていく。
そして出た数字は64点だった。
「なんでだよ! この機械ぶっこわれてんじゃねーの!」
マイクを投げつけようとするセイをすかさずトワくんが止める。
「壊れてねーし、落ち着けって」
どうやらいつものことらしい。なるほど、これでは賭けにならないわけだ。
「カラオケで勝負しようなんて、よく言い出したもんだ……」
思わずつぶやくと、セイが「なんだと!」と振り向いた。
「ちィこの野郎! 次は負けねえ!」
「次って……何回歌っても同じだと思うんだけど……」
「うっせえ! 2回戦だ!」