「俺の曲だ」
聞き覚えのある旋律に、私は思わず叫ぶ。
「あ、この曲!」
「ん? チーコもインフォ知ってんの?」
私はこくこくとうなずいた。
【インフィニティー・フォーカス】は、まだそんなに知名度はないけれど、聞き手の魂を揺さぶるようなサウンドを生み出すロックバンドだ。
しかもトワくんが入れたこの曲は、デビューアルバムの初回限定版に収録されているファンにはたまらない神曲ではないか!
「すっごい好き! インディーズのころから知ってるもん!」
「よし、マイク持て!」
思いがけない趣味の一致に、マイクを握る手に力が入った。
ぽかんとしているメンバーを尻目に、ふたりで熱唱する。
「チーコ、やるじゃねーか」
「このバンドの曲、私の音域で歌いやすいんだよね。男の人にしては高音なのに、トワくんよく出るね」
「伊達にファンやってねーよ」
ふたりのデュエットは91点というなかなかの高得点を記録した。セイが「ちっ」と舌を鳴らす。