「っはぁ...結!!!」
「あ、和」
「ちょ!!!おま、貴斗!!!
 なっ、なな何結のこと抱きしめっ...」
「んー?」
「だぁぁぁ!!!!」


またも私をぎゅっと抱きしめる貴斗先輩
...好きって、気づいちゃった
...あぁもう、この体制...
ものすっごく恥ずかしいよ...


「ゆ、結のこと離せよっ!!!
 ていうかっ!!!お前愛梨いるだろ!!!?」


...あ
そうだ
貴斗先輩にはもう
ラブラブの、彼女がいるんだった
...この恋、報われないじゃん
うわぁ
気づいて早々失恋じゃん...


「んー?別にゆんは
 俺の妹みたいなもんだし」
「い、妹でもなんでもいいから
 とりあえず離せぇぇ!!!」


...和は何をそんなにあわてる必要があるんだろ?
別に抱きつくくらい、どうってことないよね?


――――ぎゅ


「ん」
「!!!!!?」
「あれ...ゆ、い?」
「あ、功」
「...あ、功...じゃねぇよ
 貴斗お前何で結に抱きついてんだよ
 てか結何で貴斗に抱きついてんだよ」
「...」
「無視かよ」
「あ...あ...あ...
 ゆ、ゆゆゆ結まで抱きついっ...」


妹、として
抱きつくのは許される
彼女、として
隣にいることはきっと無理だ
だからこうして後輩として甘えるくらい
許してね


「ゆんー、可愛いことしてくれるねぇ」
「可愛くないけど...」
「結っ!!!とりあえず今は離せ!!!
 俺のいないところで抱きつくんだ!!!」
「何?和も結に抱きついてほしいの?
 てかそんなん、和だって彼女いるじゃん」
「ばっ...!!!てめぇ、貴斗!!!」
「おめぇらうるせぇ。
 2人ともダメだよ。結を抱きしめる権利は
 俺にある」
「「お前も彼女いるだろ」」
「...」
「ぷふっ...」


ダメだ
こらえきれない
笑えてきちゃった


「...何笑ってんだよ、結」
「そーだよ!!!何笑ってんだよ!!!」
「? 結?」
「い、いやっ...
 仲いーなーって...」
「「「よくない」」」
「あはははっ!!!」
「「「...」」」


...ふと
〝仲のいい友達〟
という言葉が脳裏でリピートされた
...あ


「...結」
「ん?」
「あのさ、話戻るんだけど」
「うん...」
「結は一人じゃない」
「...」
「貴斗が言っちゃったかもだけど
 俺だっているし、功も貴斗もいる」
「うん」
「辛いときは、俺らに頼ること」
「...」
「俺らが、結の護衛として
 全力でお守りします」


...何それ
私、ただの女子中学生だよ
護衛されるような筋合いの人じゃないよ


「護衛は遠慮させていただきます」
「ダーメ。俺らから結に関わったからには
 全力で護衛しないとね」
「とりあえず登下校は俺らとすること」
「一人ぼっちじゃないよ」


自分勝手な言葉ばかり並べてるのに
でも、その言葉一つ一つが安心できて
また自然と、涙がじわりと滲んだ


「...ありがと」


私は
その言葉を
全力で3人に伝えた