もう、次の授業はない
本当ならさっきも帰る時間だった
皆に合わせて話をぼーっと聞いてただけだった

...早く帰ればよかった

でもなんでかな
別にたいていのことは予想していた
私が先輩と関われば
こういうことくらい起きるって
ちゃんと予想していたはずなのに
なぜ涙は止まってくれないんだろう


「...もう、帰ろ」


今は誰とも話したくない
頼れない
もう信頼できる人なんて作りたくない
笑って、過ごしたかった

...あ、

私は、嘘つきだ
今、本音がでた
皆と爆笑して泣いてケンカして
それが友達でしょっていう日々を
きっと過ごしたかったんだ
なのに私は強がって
長年一緒にいた友達を
...悪者にしたんだ

なんだかんだいって付き合ってくれた友達
同情なんかじゃなかった

...私が一番、ひどいやつだ


「ゆんっ」
「...!?」






...貴斗、先輩





「何で、いるん、ですか?」


泣いているのを必死に隠す
口と鼻をマフラーにうずめ
うつむいて涙目になっていることを誤魔化す


「...まただ」


そう言って
少し辛そうに先輩は言う


「言ってなかったんだね?
 俺らのことは嘘で
 ずっと、合わせてたって」


本当はすぐ言うつもりだった
でも、きっかけがなかったし
軽蔑されるのが嫌だった


「俺、すっかりもう言ったと思ってて
 だから今日も一緒に行きたかったんだけど」
「...」


――――グイッ


「!!!?」
「ゆん」
「なっ、何ですかっ...は、離してくださ」
「嫌だよ」
「...」
「もう、泣かないで」
「え」
「別にゆんに味方がいないわけじゃない
 だって俺がいるじゃん?
 他にも和だって功だって
 桃菜だって...
 ゆんを理解してくれる人は
 他にもたくさんいるはず」
「っ...」
「ゆん、俺がいるから、大丈夫」


そう言って微笑む貴斗先輩
あぁ、私、気づいてしまった
この笑顔に弱いこと
この腕にすっぽりはまると安心すること
何よりも、一緒にいたいこと


――――私は貴斗先輩が好きなんだ