「...ふぁ」


朝練...かぁ
だるいな...
重い身をやっとのことで起こし
まずはLINEにコメが入ってるかチェックした


「...ん?」


〝明日の朝一緒にいこ〟


...いやいやいや
私が朝練ってことわかって言ってるのかな?
...あ、ちなみにこれは貴斗先輩から。
昨日和先輩と功に散々懐かれたあと
昨日の状況をいち早く和先輩が貴斗先輩に話したと。
...彼女さんはいいのか?


「...朝練なんですけど...っと。」


まぁいっか
悪いけどおいていくっていう方針で。

起きてすぐに思ったこと。
私は先輩たちと出会えてよかった。
同級生と関わる、重い心なんて持たずに
素で話せるような感覚。
それがなんとも新鮮で
光が、射し込んだ気がした。


「...いってきまふ」
「パン咥えたまんま行くの!?」
「...ふぁってふぇんふぁいがきひゃふ」
「...眠そうね。てか先輩?...まぁいい。行ってら」


なんとも適当な母だ。
まぁ、私の母は自由人だからね。
他のお母さんみたいに「勉強しろ」とか
ぐちぐち言わない人。逆に先生の悪口普通に言っちゃう人。
...心は私と同じ中1って感じだもんな


―――ガチャ


「おっはよーんっ!結っ!」


――――ぎゅぅうぅうううう


「!? ぐ、ぐるじぃっ...」
「ゴラ。和。すぐ抱きつくんじゃねぇ。」


おぅ。
功ってば顔が怖い。
朝から不機嫌だな。寝起き悪いのかな?


「ゆん、おはよう」
「おはよーございますっ」


貴斗先輩。
抱きついてきたのは和先輩。
...ってか!!!!!


「何でいるんですか!!!!」
「え?だってLINEに行くって言ったよね?」
「いや!!!私朝練ですし!!!
 先輩たち引退しちゃって早いじゃないですか!!!」
「んー?朝練なんて関係ないしー?
 結と朝からいれるなんてラッキー☆」
「...」


和先輩はいつでも抱きついてきますよね。


「...行くぞ。結が遅れる。」
「おー♪」
「うん」
「...」


なんだろう。
このイケメン3人の間にデブス、ってね。
めっちゃ違和感あるよね。


「てゆーかさー」
「?」
「何?」
「ん?」
「結さ、和先輩って呼ぶのやめて?」
「は?」
「だってさー、なんか固いよ
 せっかくこんなに仲良くなったんだから
 タメと呼び捨てね?いい?わかった?」
「えぇ...」
「はい。...は?」
「っっっ!!!!!」


え!!!?
何、このドSオーラ!!!
ハンパじゃないんですけど!!!!


「はっ...はぃっ...!!!」
「ん♪いい子いい子♪」
「!? !?」
「あーぁ。これじゃただ単に脅しだよね」
「あぁ。和のドSは何で発動するんだろな」
「ふふん。結、仲良くなったからには...
 俺、結構いじめるからね?」
「ひっ!!!?」


あ、和せん...げふん。和って素はこっち!?
結構学校では可愛い...いや違うな。
なつっこい感じなんだけど...
実は抱きつくの嫌いとか、そういうの?
うわぁ、キャラ作ってんだ...お疲れっす...


――――グイッ


「うわっ!?」
「...」
「こ、功?」


うわぁ...びっくりした
何でいきなり引っ張るかな...


「ど、どしたの?」
「...和とばっか喋ってて
 気にくわねぇ」
「は!?」


いや、何それ!?
他の女子が聞いたら勘違いの嵐だよ!?
あのさ、君彼女いるよね!?
女子誰でもにそんなんじゃ
桃菜さんに呆れられるからね!?


「えぇ!?功、そんなこと言うんだ」
「何が?」
「桃菜にも言わねぇじゃん。そんなこと」
「そうか?...まぁ、結は別かも」
「っ!?」
「あー、結顔真っ赤」
「ま、真っ赤じゃないっ!!!」


いや、本当は真っ赤
なんかもう頬がカッカと熱い気がするもん
長年、和とは一緒にいるけど
...ヤキモチ?的なの妬いてもらったのは初めてかな...


「こ、こほんっ... ね、ねぇ功?」
「ん?」


うわぁ...その整った顔で
いちいち振り向かれるの腹立つ...


「そ、それってヤキモチだったり?」


ちょっとふざけた口調で言ってみた
まさかね。功がヤキモチなんてね。
功は昔っから心の広い人で...


「悪いかよ」
「だよねー...って、はぁ!!!?」


予想外。
いや、ヤキモチだなんて。
むっちゃ冗談で言ってみたのに。
実はビンゴ...


「だって結と一番近かったのは
 俺だったのに...」
「っっっ!!!」
「なんかいきなり和とか貴斗とかと
 仲良くなっちゃってさ...」
「ちょちょちょ!!!功、あざといっ!!!」
「?」
「...もういいっ」


赤くなる顔を隠しつつ
3人より速いペースで歩いた
...振り返ると
和と貴斗は私たちのやりとりを見て
唖然としていた


「...どうしたの?」
「いや...功がこんなに溺愛してんの初めて見た」
「これは桃菜以上だろ」
「...」
「「ノーコメントかよっ!!!!」


...何それ。
なんか無性に笑えてきた。

気が付けばもう、学校の門にいた
こんなにあっという間で楽しかった朝はない。
これも先輩といる特権?


「んじゃっ。私は部活行くね」
「うん」
「がんばってね」
「帰り、一緒に帰ろうな」
「...っ、うんっ!!!」


楽しくて。嬉しくて。
きっとこれは私だけの特権。
大好きで、憧れだった3人と過ごすと
こんなにも見る世界が変わった。



この世界は



いつまで続く―――――?