次の日
窓を開けると雨が降っていた
きっと私の心をまるごと映している


「...何かと雨の日って憂鬱」


雨じゃなくってもきっと憂鬱なんだけども。

朝の日課は、LINEを開くこと
とりあえずコメントを返して
それから支度する
時間かけてるようだけど
普通に支度すると時間が余ってしょうがない
だからこういう日課が生まれた


「...」


アプリを開いて固まった
いつメングループにもこちゃにも
たくさんの貴斗のコメントがあった


〝結、ごめん〟
〝俺変なこと言った〟
〝何で無視する?喋りたい〟


ずいぶんと自分勝手なことを言ってると思う
でも喋りたい、って言われた
それだけで私の心は
...動いてしまった
揺らいでしまった

あぁ、もう

簡単に揺れ動くほど好きなんだ


「...行ってくる」
「行ってらっしゃい」


そう言って笑ってくれる母は
私が悩んでいることを悟っているようだった
根掘り葉掘り聞こうとしない
私の母なりの優しさだ


「おはよう、結」
「おはよ」


和も貴斗先輩も
拓海も萌さんも
桃菜さんもいない
功と、2人きりの朝

これは、私が功だけがいいと頼んだ


「結、」
「ん?」
「俺だけで本当によかったの?」
「功だけがいいの」
「...そっか」


嬉しそうに柔らかく微笑む、功
不覚にもドキッとしてしまった
功、こんな優しく笑うっけ?
数秒間、見つめてしまった


「結?どした?」


そう言って頭を撫でてくれる


「...学校行きたくない」
「...」
「...っあ、ご、ごめ、私...」
「いいよ」
「え、」
「今日はサボろ」
「は!?」


功から思いもよらぬ言葉
『サボろ』?
今、功が言った?
...いやいやいやでも!!!


「でも、功、受験生でっ...」
「俺もう高校行けるから」
「はぁ!?」
「推薦で。めっちゃ早いけど余裕で行けるから」
「さすがですね」


...確かに功はめっちゃ頭いい
勉強しなくてもテスト点すごかったしな...


「結、」
「ん?」
「何したい?」
「...」


何したい?
かぁ...
それ以前に、母が...


「功、私、やっぱり...」
「何で?」
「お母さんにばれたら...」
「あ、それならもう言った」
「!?」


あぁ!?


「そしたら『今日限定ね♪』ってきたよ、ほら」
「...そっ...か」
「休みってことも、俺の母さんと
 結の母さんでうまくやってくれるってさ」


なんと素晴らしい母たちなんだ


「功、ごめ...んむぐっ」
「結、その、すぐ謝る癖直しなさい
 これは俺が好きでやってることなんだから」
「...ハイ」


今日は1日功につきあってもらいます