その日の帰り道。
いつものように友達に付き合い
遠回りにして帰ることにした。
正直...嫌だけども。


「ほら結帰ろう」
「うん」


先輩先輩って騒ぐのも
遠回りして帰るのも
自分の意見を飲みこんだまま
友達に付き合ってるだけなんだ
でもそれは自分で決めたことなんだから
友達に話すことでもない
我慢して、いかなきゃいけない


「...ゅい、ゆい、結っ!!!」
「ふぇっ!?」


ぼーっとしてたせいか
友達に睨まれる


「へへ、ごめん...ぼーっとしてた」
「もう、せっかくチャンス作ってあげてるんだから」


友達がこそっと耳打ちをする
...何?

見上げると、功と貴斗先輩と和先輩がいた
...っえぇ!!!?何で!!!?
多分私は、すんごい顔してたんだと思う


「結、どしたの」
「いや、こっちが聞きたい...」
「?」


ごめんね、功...
こんなめんどくさいことに巻き込んじゃって...


「功、この子と知り合いなの?えっと、結と」
「!?」


和先輩、何で私の名前わかるんですか?


「部活も一緒だし、わかるよそりゃ」
「!!?」


声にでてたのか!?
先輩、エスパーですか?
...部活でも浮いてる方だと思うのによくわかったなぁ...


「結、声、だだ漏れ」
「なんと!!?」


功にツッコまれ
友達には苦笑された
貴斗先輩と和先輩は爆笑している
なんか、ものすんごく恥ずかしいのですが。


「結、顔真っ赤ww」
「ほんとだ」
「ぶっはww何、この子、面白いww」
「ふふっ、ふふふふ...ww」
「?」


皆に笑われて
どうしようもなくなってるんですが。


「結ちゃーんっ!!!」
「あ、桃菜」
「桃菜さーんっ!!」


桃菜さん。
同じ剣道部。3年生。
...功の...彼女さんです!!!


「結ちゃん、また今度アニメイト行かない?」
「いいですねぇーっ!欲しい漫画があるんですよね」
「じゃあまた行こうね!部活と予定合わせといて?」
「了解ですっ!!!」


桃菜さんと私は二次元つながりで結構話す。
...えぇ、二次元大好きですよ
二次元がないと私もう死んじゃうからね


「結、ちゃん?」
「はい!!!!?」

貴斗先輩だ。
やっべ、声裏返った


「ゆんちゃんだよね」
「え、」


「ゆん」というのは私のあだ名でもある
...いやでも何でそれ知ってんですか?

私が疑問丸出しの顔をしていたようで。


「だって、LINEの名前それだよね?」
「っあぁ!!!あぁ!!!」


そうだ
友達に無理矢理登録させられたんだ
こんな奴の名前を憶えてくれたとか...感激かも

...ん?

私って先輩のことどうとも思ってないんだよね
それじゃあ何で?感激とか思っちゃってんの?
おかしいよ、どっぷりハマってる
私は
私は
何も気にせず平凡に過ごしたいのに。


「結ちゃん?」
「す、すみません。私、もう帰ります
 ...ごめん、今日は普通に帰る」
「え、あ、ちょ、結!!!?」


友達の声がしたけど...
もううんざりだ。先輩と話すなんて。
友達に付き合うなんて。
でも今更取り消しなんてできない
自分のまいた種なのに...


「最低だなぁー...」


なーんでこういうこと想っちゃうんだろう
そんなの自分が悪いのに。
何でうんざりとか思っちゃうかな。
こんな自分がうんざりだよ。


「ゆんちゃん」
「...っえ、?」


――――...貴斗先輩...?


「ど、どうし...」
「どうしたのって...
 そりゃゆんちゃんが心配だったからかなぁ」
「っ...」


甘やかさなくてもいいのに。
私なんて放っておけばいいのに。
構わなくていいのに。


「ゆんちゃんさー...」
「はっ、はぃっ...」
「一人でため込みすぎだよ?」
「え...」
「ばれてないとでも思ったの?
 バレバレだよ。友達といる時点で辛そうだった
 何でも言ってよ?相談乗るし」
「...っ、構わないでくださ」
「構わないなんて
 俺の中じゃそんな選択肢、ないよ」
「っ...ぅっ...ふぅっ...」
「ほーら、泣くのも我慢してー
 どんだけ我慢してたのさ」


私の頭をそっと撫でる貴斗先輩に
少しだけドキッとしたのは誰も知らない―――...