「...愛梨?」


...何で?
何で、ここにいるの?


「ゆ、い」


私を呼ぶ声がした
声の主は、和だった


「...何?どしたの?」
「あ、いや...あの、」
「ん?」
「っ、」


心底心配そうな顔する
何で?私は大丈夫だよ?


「貴斗?どーしてこんなとこいるのっ?」
「ん?今日はこいつらと出かけてた」
「ん...?先輩たちと...
 あれ、結ちゃん?」


途端に私の体はビクッと震えた
どうしよう
先輩から見れば
後輩である私が
3年生と行動なんて不自然に決まってる


「え、何で結ちゃんが...」
「なぁに言ってんの?愛梨」
「え、和先輩?」


私の体を後ろから抱きしめて言う、和


「メンバーよく見てよ?
 功と結は幼なじみでしょ?」
「え?あぁ、そうでしたね...?」
「それで、功のお母さんに買い物頼まれたんだって。
 結と功がね。んで2人きりじゃちょっとアレかなってなって
 俺らが付き添い。そんだけのこと。」


淡々と嘘をつく、和
どうしたらこんな嘘、すぐつけるんだろ
...いや、今は助かってるんだもん


「...そうなの?貴斗」
「え?あ、う、うん」
「ふぅー...ん」


訝しげに私を見る愛梨さんの目線が痛い


「なぁーに疑っちゃってんの?愛梨
 この体制見てよ?
 別に疑わなくたって結と俺がこういう関係だから」



――――――ちゅっ


...え?
私は和の顔を見た
そして皆を見た
...皆、目を丸くして驚いてる


「...和、せんぱ...
 別れたん...ですか?」
「うん、つい昨日ね。
 もう終わりにしたかったから別れた」


きっと、彼女さんとだろう
そうやって微笑む和
...でもその横顔が辛そうに見えた
功も桃菜さんも拓海もすごく驚いてるようで
未だに動かないし
...でも、萌さんは
ずっとこっちを見ながら震えていた
...どうか、したのかな?


「そうなんですか...
 じゃあ、末永く幸せになってください」


そう言って
貴斗先輩とものすごくくっつく愛梨さん


「おーい、愛梨!!!」
「あ、...ちょっとゴメン」
「あれ?愛梨、...先輩?」


そこに来たのは男子の先輩だった
愛梨さんと同学年だから...2年生か
でも...
何で?


「あっ...あぁ、
 別にコイツの他にもいるんだけどね?
 今日は...私たちもショッピングなのっ」


明らかに挙動不審でしょ
どう考えてもおかしいでしょ


「んじゃ、私もう行くね
 ...貴斗、バイバイ」


――――――ちゅっ


今度は愛梨さんが
貴斗にキスをした
...そして足早に去っていった
耐えらんない
こんな見せつけられても
私、もう、ダメだ

涙が徐々にたまってきて
零れ落ちそうになった途端

...視界が真っ暗になった


「っ!?」
「結、今から来てほしいとこあるんだけど!」
「え、あ、和!?」
「さっきね、すっげぇ結が好きそうな
 可愛いアクセの店があったんだよな
 早く行って一緒に見ようぜ!
 ...あ、お前ら適当にふらふらしててよ
 用が済んだら俺からLINEいれるから」


そう早口で言って
私を担ぐ
...担ぐ!!!?


「ちょっ、和っ...」
「いいから、黙って乗ってろ」
「っ...」


突如、私の目から
ポタッと涙がこぼれた