「おまたせーっ」
「切ってきたから一人ずつ渡すねー?」


渡されたのには
シンプルに落書きされているものがいくつもあった
ひとつずつ見ていく
まずは皆でピースをした
次は変顔
その次にハートを作って
次は皆で真ん中に顔を寄せ合って大爆笑
次は全身だから下から顔を並べてトーテムポール
最後は皆でキメ顔

...なんかすっごい和むんだけど。


「これ永久保存だなぁ...」
「俺も俺もっ!!!」


――――ドキィッ!!!!


軽くつぶやいたつもりだったけど
思いっきり聞こえていたようで
その声の主は、
...貴斗先輩


「愛梨と撮るよりも何倍も楽しかった」


...そう、ニッコリ笑って言う先輩


「...私も、楽しかったです」


そう言うと、頭をなでられた
...その時私の心の中は
嬉しいというよりは切ないという気持ちのが強かった
なんでだろう?
...いや、そんなこと思わなくたって
理由はちゃんとわかってる
痛いほどわかってる
だからずっと自分に嘘をついてきたのに
優しくされるたびに胸が痛んだ
なんかもう、辛いな


「...結?どうか、した?」
「え、あ、拓海か」
「うん?」
「...ううん?全然何にもないよ?」


私は無理矢理笑顔を作った
作れたよね、大丈夫だよね


「...」


...
何で拓海がつらそうな顔してるの?


「...また、溜め込んじゃだめだよ」


そう言って立って歩いて行っちゃう拓海
...『また』って?
拓海、いろいろと知ってくれてるの?


「結ちゃぁーん!!!今からむっちゃ買うよー!!!」


萌さんの嬉しそうな声が再び響いた
...もう本当に無駄なこと考えない
だって今日はせっかくの日なんだもん
せっかく貴斗先輩と遊べる日なんだもん
こんなチャンス、滅多にないもん...


「結ちゃーん?」


皆がこっちを見てる
...不思議そうな顔で、嬉しそうな顔で
拓海はひきつった笑顔で見てる
...ごめんね


「今、いきまぁーす!!!」


私どうしても
自分を偽ることしかできない