こんなにも私を悲しませる事が出来るのも。


こんなにも私を傷つける事が出来るのも。


……全てはカイトだけ。


君だけなんだよ……。





「ーー実亜」



吐息が私の耳を掠め、鼓膜をくすぐる。

耳元で囁かれる声は、いつもと違う別人のよう。


けれどこれは間違い無く、カイトの声。


「実亜」


寝起きのように少し掠れた声は、私の掠れていた心を埋めてゆく。 


カイトはずっと誰とも話さず、ここにひとりきりで閉じこもっていたんだね。



「夢を……見てたんだ」



夢?


「実亜が、死ぬ夢……」


そう言って、さらに強く私を抱きしめる。



……なんて縁起でもない夢見るのよ。

しかも今の私はそのネタ笑えないし。

死んでるのか生きてるのかもあやふやな状態だし……。



「……実亜が死んで、俺は実亜が眠る棺に覆い被さって、泣いてるんだ……そんな俺を、俺は、端で見てた」