「へっ? ……わぁぁ!」
背後からぬっと現れた、腕。
それが私の体をぎゅっと掴み、そのまま背後にある扉の中へと引きづり込んだ。
一瞬、ほんの一度瞬きをするくらいの一瞬だった。
その腕は私を捕まえて、開いてもいない扉の中へすり抜けるように飲み込み続けた。
驚きのあまり瞼を閉じ、再び開いた先には……晴々とした、青空が広がっていた。
あったかい……。
それは天気のせいだと思ったんだけど、答えは違った。
その温もりは、私がずっと欲してたものだった。
「……カイ、ト」
後ろからぎゅっと抱きしめられている。
カイトの腕、カイトの温もり。
そう……私はもう一度これを感じたかった。
これでもかって程に胸が軋む音がする。
締め付けられた心臓が悲鳴をあげてる。
苦しくて、苦しくて、涙が溢れてしまいそうで、私は声を出す事すら出来ない。
だから代わりに、恐る恐るカイトの腕を掴む。
そっと。
彼が消えてしまったりしない様に、壊れたりしない様に……。