あっ、ほら、またひとつ。
『……もしかしたら、カイトが目覚め始めてるのかもしれない。封印されていた記憶が解放に向かってる証拠』
「えっ! 本当!?」
『多分だけど……数ある扉は目くらましの役割も果たしていたんだわ。けれど、実亜の声が封印されているカイトの心を揺さぶったのかもしれない』
「それじゃあ……」
喜びの声をあげようとしていた瞬間、私の目はあるものを捉えた。
……鏡?
いいや違う。
それは凛と佇む扉。
他の扉とはまた違う、ある意味異色の扉。
そしてそれを見るのは二度目だった。
「……鍵付きの、扉」
カイト本人ですら鍵を持っていないと言ってた扉。
その扉が少しばかり開いている。
そこに引き込まれるように、私の足は向かう。
あそこには一体どんな過去が眠っているのだろう。
あの綺麗な扉には何が入っているのだろう。
興味が無いわけもなく、自然と体が引き寄せられる。
一歩、また一歩。
歩み出した瞬間だった。
それは突然の出来事で、意識は別の方向へ向いてたせいで反応が遅れた。
踏み出していた足は、思わぬ方向へ引きずり込まれる。