「……なんて、ね」
そんなの、嘘だよ。
本当はね、カイトの事を忘れたくない。
たとえ短い期間だったとしても、カイトと一緒にいた時間を忘れたくない。
ねぇ、カイト。
そう思ってるのは、私だけ……?
俺の後ろをついて来いって言ったのはどこの誰よ?
離れるなって言ったのはどこのどいつよ?
決して楽しい事ばかりじゃなかったけど、カイトにとって忘れてもいいくらいの思い出?
「ねぇ、本当に。忘れてしまうつもりなの……?」
ーー私はここにいるというのに。
「…………んっ?」
項垂れかけてた頭を持ち上げ、両目を擦る。すると、ひとつ、またひとつ。
「あれ? 扉が、減ってる?」
初めは気のせいかと思った。
だってこれだけの数、見渡す限り扉の山。
これだけあるんだから、きっと気のせいだと思っても仕方ない。
……けど、明らかに扉の数が減っていってる。