「カイトにとっては、この方がいいのかもしれないね」
私は異世界から来た実亜で、ミアじゃない。
元々、カイトにとって、この世界にとって私は不要な存在。
「だって私とカイトには、接点なんてなかったんだから……」
そう、カイトと私には。
カイトとミア、海斗と私、それが本来あるべき繋がり。
あるべき形。
だからカイトは私の事を覚えてる必要もなければ、むしろ知らない方がいい。
その方がきっと、何もかも上手くいく。
無理してカイトの記憶を解放したって、多分良い事なんてないはずだ。
miaが私の世界に無理矢理来たように。
それによって何らかの歪みが生じて、miaは別の次元に飛ばされ、私の魂は抜けてしまった。
そっと扉に触れる。
白い扉。
繊細で馴染みの良い、カイトの心。
それに触れながら、ゆっくりと額を擦り付ける。
空きもしない扉の前で、駄々をこねる子供のように。