「はぁ、はぁ、はぁ……」


ゆっくり時間をかけて息を吸っては、吐き出す。

やっと呼吸のリズムが整った時、手をついた扉を撫でる。


表面が絹のようにサラサラで、それでいてどこかマシュマロのように手に馴染む。

とても繊細。

とても優美。


扉の表面をなぞりながら、やがてドアノブに到着する。

銀色に輝くノブはひやりと冷たく、私を拒絶しているように感じる。

けれど、私はそれをゆっくりと捻った。


ガチャリ。


ノブは半回転したものの、扉を開こうとはしない。


「やっぱ、だめか……」


でも、きっとカイトはこの中にいる。

私の知ってる救い出したいカイトは、きっと。


「カイト、ねぇいるんでしょ? 隠れてないで出てきてよ。この扉開けてよ」


扉を叩きながら、問いかける。


「ねぇ、ここにミアがいるよ。カイトがずっと探してたミアだよ。いいの? ミアの事放置してていいの? カイトはミアの第一ソーサラーなんでしょ」


暫く話しかけた後、扉に耳を付け、中の様子を窺う。

何か反応があるんじゃないかと思っての行動だけど、中は至って変わらずの無音。