とりあえず一番近くにある扉に手を掛けた。
よくある丸いドアノブに触れ、がちゃりと音を鳴らしながら時計回りに捻る。
「……ん? あれ?」
いくら回しても扉が開く様子は無い。
ドアノブはがちゃがちゃと忙しなく音を鳴らし続けるだけ。
ひとつ奥にある台形の扉も開けてみる。
けれど結果は同じ。
がちゃがちゃという無骨な音が響くだけで、扉はぴくりとも動かない。
「全然開かないんだけど」
以前ここに来た時、扉は一つずつ現れた。
まるで私を誘う、指標のように。
その扉も簡単に開く物ばかりではなかったはず。
ならこれも扉が重いのか、それとも何か開けるには仕掛けがあるのだろうか。
『多分miaが扉を閉じて開かないようにしてるんだと思う。自分に都合良く事が進むように。実亜に開けられないように』
「そんなっ、じゃあどうすればいいの?」
数多にある扉をただ呆然と見渡す。
これらの中にカイトがいるはずなのに、私には開ける事が出来ない。
それでなくとも、これだけの扉の中からカイトを探し出すのだって至難の業だというのに。