「さっさとつまみ出してください。親はどこです?」
隠れている瑞希に詰め寄る。
彼はこの学園の教師で、まりあのクラスの公民の担任でもあった。
「伊奈先生、迷子なので保護したまでです。」
詰め寄る教師に立ちはだかるように、まりあと瑞希の前に瑛は進み出た。
伊奈と呼ばれた教師は一瞥すると、意地の悪そうな笑みを浮かべてから、背を向ける。
「ならば早く放送でもかけなさい。学園祭とはいえ、遊んでいる場合ではないでしょう。」
では、と。
伊奈は去っていった。
途端に場の空気は緩んだが、瑞希は相当怖かったのか、俯いたまま泣き出した。