鬼だとか冷血だとか悪口が聞こえるが、それは無視をする。
仲良く言い合いをしていてくれればいいものを、何故そういう時ほど声がそろうのか。

もう一度溜め息を吐きたい気分になった時。


「何故、無関係の子供が模擬店に入り込んでいるのですか?」


冷たい声が、一瞬にしてその場を静めた。
黒いスーツに、真面目そうな眼鏡。
紳士そうに見える風貌なのに、纏っている雰囲気は剣呑だ。

瑛に怯えてまりあの後ろに隠れていた瑞希は、幼いながら自分の事を言われているのだと気付いたようで、小さな手にベビーカステラの袋を握りしめたまま、うつむいて動けない。