「…僕には、本当に愛している人が居たんだ」

「…聞いてるわ」

「その人が、亡くなったんだ。」

「…え?」

「元々、体の弱い人で病死だったんだ…」

宇津栗は、どこを見つめているのか分からない遠い目で続けた。

「僕は、悲しかった。当たり前か…大切な人が死んだんだから。」

「…。」

「僕は、とっさに君の顔が浮かんだ。あの、可愛く笑う君の顔が…」

「…え」

「どこかに秘めていた想いを吐き出すしかなかったんだ」

「…?」

「僕の本当に愛した女性は君なんだ」

「…意味が分からないわ」

「天国の彼女の事も、愛していた。だけど、一度もキスも抱いてやる事も出来なかったんだ…。」

宇津栗は、私の目を見つめて低い声で言った。

「…君を、愛していたから」

「…宇津栗」

「大好きなんだ」

「………っ、何年待たせるのっ……っ」

「ごめん」

「宇津栗っ…」

私は、宇津栗の胸に飛び込んだ。

もう、宇津栗しか見えない。

私は、沢山の愛をもらいながら宇津栗に優しく抱かれた。