少納言がくれた正忠様からの手紙が一枚。
私は、その手紙だけを支えに六年間、部屋に監禁された。

「藤咲花…」

「お母様っ」

「お父様が亡くなってから、今年で10年よ…」

「…そうですか」

「藤咲花…お母さんね好きな人が出来たの」

「…え?」

「この家を出ていってほしいの…」

「…へ?」

私の目からは涙が零れた。

何て勝手な母親だろう…?

「お母様は最低ですっ!!お母様は好きな人が出来るとその人の所に飛んでいけるかもしれないっ!!でも…私は、飛んでいけなかった。貴方のせいでっ!!」
「ごめんなさい」

「謝らないでっ!!貴方なんて大嫌いですっ!!」

私は、長い間住んだ薄汚い部屋を飛び出した。