あたしはさすがにちょっと焦った。
そんなこともあるの!?
理由もなく人を好きになることがあるの!?
それは初めて聞いたよ!?
うろたえるあたしを、彩音はポッキーをくわえながら見ている。
「……悠さぁ、弟いるじゃん?弟が好きな理由ってある?」
ふと振られた質問に、あたしはきょとんとする。
愛を好きな理由…?
「可愛いから。」
即答した瞬間、彩音の体がガクッと傾いた。
呆れられたみたい…。
「あんたの弟は、可愛いじゃなくてガチなイケメンなの!このブラコンめ……」
彩音は少しため息をついて、逸れかけていた会話を戻す。
「悠は、弟が好きな明確な理由があるみたいだけど……世間では人間性に関係なく家族だから好きっていう理由の人もいるの。人を好きになるって、そーゆーものなの。」
「……なんか分かるような、分からないような。」
お互いにポッキーを一本つまんで、サク、とかじる。
眉間にシワを寄せたあたしを見て、彩音は困ったように笑ってる。
「ま……自分に素直に生きてれば、いつか分かるんじゃない?」
「そーゆーもんかな?」
「あとは、悠次第でしょ。」
彩音はニコリと微笑む。
最後は投げるような発言があったものの、適当に言っているわけではなさそうだ。
「そういうもんかぁー……」