「トウは妖精なのに…恋愛感情とか、人間らしい感情を持ってるん…。あたしの方がよっぽど…。」






あたしの方がよっぽど、人間らしい感情を知らないのかもしれない。
同じ年くらいの友達は、皆知っているみたいなのに。





トウはあたしをジッと見つめ、優しく微笑んだ。







「そんなことないよ。人間らしさは…表情が見えるとか、欲があるとか、特定の感情を知っているとか、そんなことじゃないよ。」





「……そうかな?」







トウはコクリと頷く。
あたしを認めてくれるように。





「俺も、人間になりたいな…。」






なぜ彼はそう思ったのか…全く分からない。
ただ、彼は冗談で言っているわけではない。それだけは何となく分かった。




返事に困ったあたしに、トウは気にせず話し続ける。





「でも、悠ちゃんは…恋も、嫉妬も知らない綺麗な妖精みたいだから……悠ちゃんが妖精になってくれたら、このままでも良いな。」






その顔は、笑っているものの寂しそうで。
無理なことを言い出す彼に、あたしは本気で困惑していた。






「…なーんてね!悠ちゃん、大好きだよ」






何事もなかったかのように振る舞うトウに、あたしも同じように振る舞うのが一番良い気がして、いつも通りの返事を返した。






「うん。ありがとー」




「ちょっと!返事が雑!!」







けれど、それは後に大きな未知の波紋を、あたしの中に起こす一石だった…。