「…まぁ、恋はするものじゃなくて落ちるものだからね。誰かに好きだと言われて、自分も相手を好きになるのは、俺は恋愛じゃないと思うよ。」
「……?う、うん。」
「いつか、悠ちゃんも分かるんじゃないかな?一緒にいるとドキドキしたり…この人は自分のことどう思ってるんだろうって気になったり、もっと知りたいって思ったり。…そういうことを、恋っていうんだと思うよ。」
トウが話す「恋」というものは、よく友達が話している恋バナの内容によく似ている。
あたしは、まだそんなことを思ったことがないけど……いつかそう思うのかな…?
そう考えて、少し首を傾げるあたしを見て、トウはフッと笑った。
「そうやって考えると…俺は悠ちゃんのことが好きって言うよりは、違う気持ちだと思うんだけどね…」
「違う気持ち…?」
さらに出てきた初耳ワードに、あたしはまた首を傾げる。
でも、トウはそれについて答えるつもりはないらしい。
「でも、悠ちゃんにはまだ早いかな。まずは俺の気持ちをちゃんと知ってもらわないと…、……!」
トウはあたしの手に触れようとしたのか、手を伸ばしたけれど、何かに気付いたようで手を引っ込めた。
「……?」
でも、次の瞬間にはトウはいつも通りに戻っていた。
だから、たいして気にしなかった。
あたしは、さっきから胸にとどまる気持ちを吐き出した。