「悠、ちゃん…ごめん、俺先に帰るね…気を付けて帰ってね…」





こちらを見ずにトウは言い切ると、人の波を避けながら、人に当たらないようにしながらお祭りから立ち去っていった。




その様子をポカンと見ていたあたしに、愛が肩を叩いて話しかける。
見上げた愛は、とても心配そうな視線を向ける。





「姉さん…?大丈夫?ナンパに会ったんでしょ…?腕掴まれたって聞いたけど」





「え?ナンパ?」





ナンパなんてあったっけ?
キョトンとするあたしを見て、愛は困ったようにあたしを見る。






「……え?違うの?トウくんからそう聞いてるんだけど」




「いや、そんなことなかったと思うけど…。あ、でもさっきのナンパって言うのかな?」




「……ってことはナンパだったと思うよ。トウくんから後は任されてるから、帰ろっか。」






そう言って、愛はあたしの手を取って歩き出した。







愛の友達は突然姉の手を掴み、歩き出したことにはさすがに驚いていた。



「えっ、ちょっ愛!?」
「もう帰んの!?」




「うん。じゃーな。」






友達の方を少しも見ずに別れの挨拶を告げる愛。
友達の方はまだ納得できていないようだった。