「そろそろその人のこと離した方が良いよ。注目されてるし。」





「……あ。」




トウにそう言われ、周囲を見渡すとかなり沢山の人にガン見されていた。
あたしは思わず、パッと掴んでいた腕を離す。






「大丈夫か!?」
「おぉ…おい、サッサと行くぞ」
「あいつ、ガチでやべーよ」



男の人たちは焦った顔をして、腕を掴んだ男の人が解放されたのを確認して足早に去っていった。







残されたのはあたしとトウだけで、周囲の人もさっきのは何だったのか…と不思議そうな顔をしていた。


でも、次第に人の波が復活して、何事もなかったかのように喧騒はよみがえった。






……ついカッとなって、以前愛に習った護身術を使ってしまった。




一時の感情に流されたことに反省しつつ自分の右腕を見つめていると、トウが駆け寄ってきた。






「悠ちゃん…?大丈夫…?」




その声は、とても気遣わしげだった。
トウに話しかけられて、あたしは初めてボーッとしていたことに気付いた。