「……ぶふっ!…あははははは…!」




「……ちょっと。何笑ってんの?」







あたしが笑うのを見た愛は、ムッとした目でこちらを見ている。






「ごめんごめん、愛は可愛いなって思って。」





「姉さんの方が可愛い。…だからこそ、気をつけないと不用心だよ。」





愛の言葉に、あたしは理解が追いつかなかった。








あたしが?可愛い?



「……愛よりも?」






あたしの質問に、愛は眉をピクリと動かした。
リアクションはそれだけだけど、どうやらあたしの言いたいことは伝わったらしい。





あたしと愛の会話は大体こんな感じ。
言葉が足りなくても伝わることが多い。
兄弟だから出来る会話なのかもしれない。







「主語がないんだけど。…というか、俺が可愛いってのがそもそもよく分からない。」






「……え?愛はあたしより可愛いじゃん。…あ、でも最近カッコよくなったよね。ほんと愛はすごいよ。」





そう言うと、愛は照れたように目をそらした。
…やっぱ可愛いな。
そして、愛はため息をついた。






「姉さんって可愛いけど…男前だしカッコいいよね。…ほんと、信じられないよ。……で?ご飯どうする?」






「んー……、イタリアンが良い」







愛の返事はない。
でも無言で頷いているから、納得してくれたらしい。





今日の夕ご飯は外食。
部屋の電気を消して、バッグを持ってあたしは愛と出かけた。











そんな彼女の部屋を、隣の家から見つめる者が一人……。






「くっそぉー………あのシスコン、仲良すぎて困るな…。弟め……!」





温泉の妖精は、珍しくポジティブな頭を抱えていた。