「これ、おねーちゃんが作ったハンバーグ」
「・・・美味しそうだな」
「うんっ!」
頭を撫で、静かに立ち上がり
玄関に向かった。
「帰っちゃうの?」
「ご飯残すんじゃねーぞ」
耐えきれなくなった。
幼い頃の自分と重ねてしまう。
昔の自分を見てるみたいで苦しい。
「えっ」
アパートの階段を降りていると、
永原真央が帰ってきた。
「亜紀ちゃん、どーしてここに?」
「あんたの妹に捕まった」
「えっ、真里に?・・・ごめんね」
「あのさ・・・今日屋上で言ったこと、悪かったな。ごめん」
「それと、何かあったら・・・呼んで」
メールアドレスと電話番号を交換した。
「亜紀ちゃん、また来てね。中華屋もぜひ!あの店家族連れが・・・」
「家族なんかいない」
「そう、なんだ。・・・うっ」
永原真央はその場に座り込んだ。
「・・・大丈夫か?」
「うん、大丈夫だから。帰って良いよ」
軽い貧血だろうと勝手に解釈し、
アタシはその場を去った。
家に帰ると、玄関のドアの前に
奈々が座っていた。
「どこ行ってたんだよー。喧嘩でもしに、街へ出てたんすかー」
彼女はわざとらしい敬語で笑い出した。
カギを開け家に入ると、当たり前のように
家の中に入ってきた。
「怒って出てったくせに、何でまた」
「別に、亜紀に怒った訳じゃないし」
「・・・あいつは、何で死んだと思う?」
「辛かった、苦しかった、悲しかった。絶望的だった。他に人が死ぬ理由なんてあんの?」
奈々は床に座った。
「あるよ」
「・・・何だよ、真剣な顔して」
「中学の奈々はもう少し、優しかった。アタシは明るかった。沙織は強かった」
「忘れたよ、そんなん」
「奈々を・・・壊したのは何?」
「あいつだよ」
空気がどんどん悪くなっている。
奈々はイライラしている。
「最初は仲良い4人組だった。でも、あいつは・・・」