奈々はアタシから手を離して
家から出ていった。
「最初は・・・こんなんじゃ無かった」
沙織は小さく呟いた。
「あいつがいた頃は、普通に学校行って、普通に遊んでたよな。それを・・・奈々が壊しちゃった」
「ある時から奈々は変わっちゃった」
「・・・アタシ達も」
そう、アタシ達には暗い過去がある。
中学の時に仲間の1人が自殺した。
「永原真央・・・分かる?」
「クラスにいるね、確か」
「あいつに似てる」
沙織は首を傾げた。
「そうかなー」
「外見じゃなくてさ・・・性格」
「もしかして、仲良くなった?」
「別に、そんなんじゃない」
夕方になると、沙織は帰った。
暇だから街に出てみたら、中華屋の前に
永原真央が居た。
「・・・あ」
「亜紀ちゃん」
彼女は気まずそうに微笑んだ。
「ウチ、ここでバイトしてるの」
「遊ぶ金が欲しいんだ、あんたも」
「ううん・・・生活費稼いでるんだ」
「そんなん、親が・・・」
「いない、妹しかいない」
顔は笑ってるのに、目が笑ってない。
店のから店長らしき人が出てきて、
永原真央を中に呼んだ。
「今度、家族で来てね!」
彼女は店の中に去っていった。
「おねーちゃんと同じ制服」
「・・・え?」
目線を下に向けると、
小学生低学年くらいの小さな女の子が
アタシの制服のスカートを掴んでいる。
「おねーちゃん、ここにいるの」
中華屋を指差した。
「おうちはすぐそこなんだけどね、寂しくなったの」
「いつも来んのか?」
「寂しいときはくるよ。でも、ほんの少しで帰されちゃうの」
「姉ちゃんの名前は、永原真央?」
「うん・・・友達なの?」
アタシは首を横に振った。
「・・・おうち帰る」
女の子はどこかに向かって走っていった。
自然と女の子を追いかけた。
「待って」