永原が倒れてから、2週間が過ぎた。
7月になり、キャンプに行く日が
近づいていた。


「沙織、キャンプ行かないんだって?」
「・・・奈々が行くなって。亜紀は?」
「迷ってる。永原と、喧嘩したんだよ」


沙織は、クラスの皆に
囲まれている永原を見つめる。


「由美にそっくり・・・亜紀が仲良くする理由が分かるかも。でも、中学の卒業式で言ってたよね?友達は要らない・・・アタシ達はただの遊び仲間になろうって」
「・・・それが?」
「結局、作るんだなって」
「何か・・・中学の自分に戻ってく気がすんだよ。あいつといると」


アタシと沙織の視線に気付いたのか、
永原がこっちを見た。


「亜紀ちゃん、沙織ちゃん」


気まずかったのに、
意外と普通に話しかけてきた。


「キャンプの申込み持って来た?」
「私は行かないから」


沙織は逃げるようにその場を去った。


「亜紀ちゃんは?」
「あのさ・・・」
「この前は熱くなりすぎてごめん。あと、真里の事ありがとう」
「別に・・・キャンプ、行く。バスの席は・・・永原の隣が良いかな」


永原は微笑んだ。


「もちろん!楽しみだね」
「・・・元気なやつ」


病気であることを疑うほど、
永原は元気すぎる。

その日から、奈々達と
顔を合わせることもなく、
クラスの皆で2泊3日のキャンプに行った。


「川釣りとか、キャンプファイヤー楽しかったなー!また行きたいね」
「行きたくない」
「・・・楽しくなかったなら、何でキャンプ参加したのさー」
「奈々達と居ると、いつも喧嘩するし・・・1人で居るのも退屈だし」
「1人大好きって感じだけどね」
「・・・そう見えるんだ、アタシ」
「あ、また余計な事言っちゃった?」


バスの外を見ると海が見えて、
浜辺で遊ぶ家族が見えた。


「永原は・・・親と出かけた記憶ある?」
「真里が生まれる前に、海に行った。真里はまだ見たことないの・・・海」
「いつか3人で行くか」


アタシは永原に心を許し始めている。
そう思えてきた。

これから、前よりは楽しい生活が
過ごせると思っていた。


でもそれは、奈々の手によって
壊されていく・・・。