美紀は試合開始の一時間以上も前に会場入りしていた。

ストレッチングとウォームアップをするためだ。
野球と同じく、それがスムーズに体を動かず原動力になるのだ。

テニスなどのラケット競技も野球と大差なく、太もも、腰、胸、肩などを鍛える。

ただ移動の激しいテニスは、足を鍛えることが重要になってくる。
高速でボールの落下位置移動して、急ブレーキきをかけられた足は時に悲鳴を上げる。


大腿四頭筋やハムストリングスなどに掛かるストレスが主な原因だ。

それを軽減するためにも体の芯を温かめるの行為は欠かせなかったのだ。


試合が終わった後のクールダウンも同様に重要な鍵になる。
ウォームアップとクールダウン。
これらが、事故のないスポーツの基本なのだ。


ウォームアップの時には柔軟体操のように座っては行わない。
土が付く。
ことを嫌うのだ。

どうやら、相撲の敗けを意味する言葉からきた縁起担ぎのようだ。

それだけみんな勝ちたいのだ。
拘りだと解っていても、そうしないと落ち着かないらしい。




 正樹は美紀の試合を応援するために段々になっている観覧席にいた。

コート上で試合前の練習をしている美紀を見て正樹は思わず息を飲んだ。


「あ……、珠希が美紀と一緒にいる」

正樹はたまらず呟いた。


正樹は珠希の癖を知っていた。
それを美紀もやっていたのだ。

それは、一つにざっくり纏めたヘアが気になり手を何度も持って行くことだった。

ストレートヘアが自慢だった珠希。
でも試合の時には邪魔になる。
だから緩く縛るのだ。

美紀は何時もはツインテールだった。
でも今日は珠希同じヘアスタイルだったのだ。
それは美紀が珠希の力を借りたくて選んだものだった。