正樹は早速練習に取りかかった。

腹筋を鍛えるバーの付いたコンクリートの台。
それから二人の挑戦が始まった。

二人三脚のようにお互いを支え合い、共に成長することを二人は望んだのだった。


筋トレの後はただぶら下がるだけの鉄棒。

背筋が伸びる気がして、正樹はすっかり此処が気に入った。

正樹は自分の背の低さを気にしていた。
だから、暇があると此処に足を向けるようになっていた。




 そんな時小耳に挟んだのが、市の体育館の中にある無料のスポーツジムだった。

週三回ある基礎講義。
それに出席した人にカードが発行されて、その後は何時でも使用しることが出来ると言うものだった。


二人は示し合わせて、同じ日にその体育館に向かった。


体育館の中に入ったらまず靴を脱ぎ、運動の出来るキレイな靴に履き替える。
その後休憩スペースの横にある階段を上った。


アリーナを上から見下ろすための場所。
そんな僅かなスペースに所狭しと置かれている筋力アップのための機械。


数は少ない。
でも充実したラインナップだった。


二人は真面目に講義を受け、其処を利用出来るカードを手に入れたのだった。




 正樹の夢の叶え方。
その答えは珠希が知っていた。
プロレスで必要な体力と技術を身に付ける方法を。


「柔道が一番よ」
珠希は言った。


「えっ!?」

正樹はそう言ったままで固まった。
盲点だったのだ。


珠希その言葉の真意には、受け身があった。

プロレスラーになるためには怪我をしない工夫。
それには受け身が一番だと悟ったのだ。

自分だって知っていたはずなのに……

正樹はその時、改めて珠希の凄さを実感したのだった。


市の体育館の無料ジムには、それが出来るマットが設置されていたのだった。

それに、正樹の高校では男子の必修スポーツが偶々柔道だった。
だから正樹は胴着を所持していたのだった。


二人が通い始めた体育館の中にある無料のスポーツジム。

其処にあったのは筋力アップ機械や、ウォーキングマシンだけではなかったのだ。