そして沙耶は三年生になった。
又……
正樹と同じクラスだった。

何時ものように無視から始まるはずだった……。


「私の出身地はコインロッカー」
その言葉に驚いて、振り返った。

其処に居たのは結城智恵だった。


智恵とは二年生の時に一緒のクラスだった。
施設の子供だとは知っていた。

(――コインロッカーって何?

――まさか、出身地が其処なの?)


正樹もその言葉に驚いているようだった。

そりゃ誰だって驚くはずだ。
出身地がコインロッカーだなんて。


でも、本当かな?
沙耶そう思っていた。




 (――もしかしたら智恵さん、アイツのことが好きなのかも知れないな)

呑気にそんなこと考えていた。


(――でもアイツ人気者だから大変だよ。

――それにプロレス好きで……)

沙耶はその時気付いた。
正樹のことを本当は意識している自分に。

一切口をきかなかったのは、トラウマのせいではなかったのだ。

アンタなんか嫌い。
は本当は大好きだと言う現れだったのだと。




 沙耶はもがいた。
トラウマと恋心。
二つの間で揺れ動いた。
そして、やはり正樹が好きなのだと結論付けた。


それでも近寄り難い。
沙耶は正樹を恨んだ。
保育園時代の体験さえなければと思い、其処に入所させた両親さえも逆恨みしたのだった。


『私の出身地はコインロッカー』
結城智恵の言葉を思い出す度に震える。

それにより、正樹は確実に智恵を意識するようになると沙耶は考えていたのだった。


沙耶は気付いていた。
正樹が智恵に恋をしていることを……