「え、ちょ、何!?」
こんなの初めてで、動揺する。
振り向きたいのに、あたしの腕を掴んでない方の手で、後ろから窓に手を付いてるもんだから、
それすらも許されない。
「ねえ、恭平っ、何っ!?あたし帰りたいんだけど!!??」
そう訴えても、後ろからは何も聞こえてこなくて。
え、無視!?!無視なの!!??!あたしなんかした!!???
若干パニックになりながら1人で考えてると、
「うるせえよ…」
ってぽそっと後ろから聞こえる。
なんだか普段の恭平の雰囲気じゃなくて、思わずあたしも黙り込む。
「…はぁ。なんでお前はそんなに鈍感なわけ?」
「ど、鈍感?」
ため息をついたかと思えば恭平がそんなことを言う。
ど、鈍感って何?なにそれ、トロいって言われてる?
「…ご、ごめん?」
「思ってねえだろ、疑問形になってるんだよ、バカ」
え、え〜…。
一応謝ったけど、なんかバレてた…。
どうしようかなとあたふたしてたらそっとあたしの肩に何かが乗る感覚。
それは恭平の頭なわけで、柔らかい髪がふわふわと、あたしの首に触れてくすぐったい。
「…きょ、きょうへい??」
さ、さすがに恥ずかしいんですが…。
ほら、もう心臓バックバック言ってる…。
「…舞香。」
「は、はい!」
いきなり小さな声で名前を呼ばれたかと思うと、
「…お前さ、いい加減気付けよばーか。」
って言われて。
「…え?」
意味が理解できなくて聞き返すと、恭平がスッと離れる。
「…て、何言ってるんだろ、俺。ごめん、頭冷やしてくる。」
いきなり離れたかと思えば、そんなことをポツリと言って、部屋のドアから出て行く。
あたしは完全に恭平の部屋に取り残されたわけで…。
「…あ、熱い。」
顔を触ってみると、なんだか熱くって。
誤魔化すように素早く帰るしかなかった。