-詩織side-


私1人で学級日誌を書いて、帰ろうとすると、有村に手首を掴まれた。




有村の手は、温かくて大きくて、いかにも男の人の手っていう感じだった…



「えっと…」



沈黙が続く。



「俺のこと、好き?…男として」



有村は下唇を噛んで、顔と耳を真っ赤にしている



突然聞かれて、なんて答えればいいのかわからなくなってしまった。




いや、突然だからじゃない。



好きじゃなかったら、好きじゃないっていえばいいだけ。




「好きじゃなくはないよ」



それが私の率直な気持ちだった。



好きじゃない訳でもない。


でも「好き」って言っちゃったら、なんか違う。


自分の気持ちがよくわからない、私はそれ以外、何も言うことができなかった。