あの後、一通りお小言を聞いてから

楓と肩を組んで俺の部屋へと向かった。




あいつは静かに後ろをついてくる。




相変わらず一言も喋らず、楓の踵を見つめている。


まだ客間に案内されていないから、行く場所がないんだろう。


3階にいつまでもいる気が起きないのはよくわかるし、別段不思議なことでもない。







「キリ」

1階に降り立つと、一早く楓はそう呼んだ。


すると、ごそごそと衣擦れの音がして、

俺の部屋の目の前にある小さなエレベーターの影から、細身の身体が出てきた。


背を丸めて相変わらずブスッとした表情だ。


「だいじょ…」

うぶか?


と、俺が声を掛ける前に




「わきまえろ」




楓の冷え冷えとした声色が告げた。