「あ゙っ!!」
「んだよ?!」

隣でいきなり大声を上げたあたしに、驚いて視線を向ける。そのまま、あたしの指さす方向を辿っていくと...。

「見んなよ!!」
「見たくなくても目に入るっつ〜の!!」
ベッドの枕元にあったエロ本。

「しゃ〜ねぇだろ!たまってんだからよ!!」
「はぁ?!開き直んないでよ!!」
「仕方ねぇだろ...。」
「最っ低!!男って何でこ...っ!!」

ふいに唇に温かいものが触れた。思考が追い付かず、それが何かが逢の唇だと言うことに気づけなかった。

「何すんの?!」

思わず逢から離れた。でも視線は合わさったまま、そらすことができない。まっすぐに見つめられて、心まで見透かされているようで、怖いような気もしたけど、何より、引きつけられるようだった...。

「謝んねぇからな...。」

つぶやくような彼の言葉に、あたしは何も言えず...

「お前が悪い...。」

そう言いながら、距離を縮めようとする。あたしの身体は、全然動かなくて...。

「お前が...千乃が好きだ...。」

それだけ言うと、もう一度唇が重なって、気がつけば彼に抱き締められていた。どんなに病気で身体が弱っても、あたしより広い肩にドキッとした...。

「お前も好きだろ...俺のこと?」

なんだか悔しくて、あたしは首を横に振った。すると、彼の温もりが無くなって...。

「ふぅ〜ん...じゃあいいよ...。」

病室を出て行こうとする彼をあたしは考えるより先に身体が動いていて彼の後ろ姿を抱き締めていた。

「あたしも好き...。」
「あぁ?聞こえねぇんだけど。」

嘘...本当は聞こえているはずなのに。後ろから見える逢の横顔が、ニヤついていた。

「好きです!」

悔しいけど、言ってやった。

「知ってる。」

そのままもう一度甘いキス―‥