お父さんが学長を務めるこの大学病院に通うようになったのは2年前の中3の時から。きっかけはこれと言ってなかったけど、当時、受験が面倒くさくて遊びまくっていたあたしを、お父さんがお小遣いupしてくれるって言うから、学校帰りたまに立ち寄るようになった。彼らと出逢ったばかりのあたしは、髪は金髪だし、眉毛はないしで...みんなには怖がられてた。でも、元々小さい子とか好きだったし、回を重ねるうちに、どうしたらもっとみんなと仲良くなれるか〜とか考えてて、気付いたら、髪色も落ち着いたし、雰囲気も前みたいにトゲトゲしくなくなったみたいな...。周りの看護師さんにも、優しくなったね、とか変わったね、ってよく言われる。あたしには、こっちの方が性にあっているのかもしれない。

「千乃、毎日毎日ご苦労なことだな。」

そんな思い出に浸っていたあたしを、現実に戻したのは逢だった。

「逢じゃんか。」

立ち上がると、逢に近寄っていき背伸びをする。

「まだ足りない...。」
「千乃が俺を抜けるわけねぇって。」

そんなのわかってる。逢が170のに、あたしは160ないし...。あたしの頭を逢の大きくて優しい手が包む。でも、そんなロマンチックなもんじゃなくて、ただたんに押さえつけられてるだけ。

「痛い痛い!」
「ちぢめちぢめ〜!」
「やめろよ〜!」

悪戯好きで、バカで、金髪で、ピアス開けまくりで、格好よくて、笑顔が子どもみたいで、ギターがうまくて...
神様、彼が何をしたっていうの...?何も悪いことしてないじゃない...確かに、金髪だけど、神様まで外見で判断するの...?

逢の命は...あと半年―‥