パパがリストラされた、そのことを知らされたのは2日前のこと。



パパは田舎に帰って実家の手伝いをするつもりだっていう。


パパの地元は同じ学校区だったママの地元。




「ママもついていくわっ!」



情熱的にそう言いきったママと感動で瞳を潤ませたパパがあつーい口づけを交わすのを横目に、わたしは困ってしまった。




どうしよう、東京を出る……?






「あたし、ついてこーっと。
もともと都会の男には見切りつけてるし」



妹の はるか がどうでもよさそうに目をこする。


「おねーちゃんは?」



わたしは……。




「わたし……」




脳裏にあのひとのことが浮かんだ。




「わたし、東京にいたい……」






主張することは嫌いだった。



だって、わたしが我慢すれば人生はなんの波乱もなく過ごせる。


喧嘩も起こらない。

それにはわたしが自分を消さないと、ってずっと思っていた。





でも……




これだけは。





そんなわたしのはじめての主張に、パパとママは慌てて唇を離した。