私は楸のことが好き。
これって…
私が自分の気持ち認めたら、夏貴を裏切ることになるのかな…?
夏貴を傷付けちゃう。
でも、自分の気持ちにもう嘘は付けないよ。
ごめんね、夏貴。
美保side.終
あの日以来。
美保とは話していない。
いや、ただ俺が逃げているだけだ。
美保の声を聞いただけで俺は…
美保をダメにしてしまうから。
傷つけてしまうから…。
理性が保つことが出来ない。
だから、距離を置く。
これしか、方法がないんだ。
だから、例え美保に嫌われたって
俺はもう美保を傷つけないって決めた。
距離を置くことが
美保を傷つけてるなんて俺には気づくことが出来なかったんだ。
「ごめんなさい」
放課後、誰もいなくなった廊下で
頭を下げる私の前には
優しくて、かっこいい自慢の彼氏だった夏貴。
頭があげられない…
夏貴、今どんな顔をしてる?
悲しい顔?
怒った顔?
私にいつも優しくしてくれた夏貴を
裏切った。
好きという気持ちをもう、返せない。
だから、私は正直に話すことにしたんだ。
偽りの気持ちで夏貴と居たって夏貴に悪いし…
———――だって、私の心にはもう…
楸しかいないから…。
「それは、つまり…俺と別れるってこと…だよな?」
ゆっくりと顔を上げて頷く。
「うん。」
「そっか…」
そう言って悲しそうに笑う夏貴に心が締め付けられる。
ごめん…
ごめんね、夏貴…
「でも、分かってたんだ。こうなること」
「え?」
わかってた?
私が夏貴を振ることを?
「なん…で?」
「お前、他に好きなやついるんだろ?」
えっ…
「なんで知って…!?」
「なんでって…ふっ、なんでだろうな?」
少し悲しげに笑う夏貴はそう言って歩き出した。
「そいつにちゃんと言ってやれ…お前の気持ち。まだ言ってないんだろ?」
うんと首を縦に振る私。
「美保と付き合えてよかったよ、本当に楽しかった。ありがとう。だから、俺のことはもういいよ。そいつのとこ行って美保の気持ち、伝えて来い」
私の背中を押してくれる、夏貴に
少し涙が出た。
私は幸せ者だったんだなって感じたから。
きっと、優しい夏貴だからこそ出来る心遣い。
だから、振り向かずに行くよ。