幼馴染の不器用な恋




「んっ」


色気ある美保の声が教室中に響く。


もう理性は崩れていた。


だから


美保の目に涙が浮かんでいるなんて



わからなかったんだ。









俺は美保に何度もキスをし、鎖骨、首筋に赤い華をつけて


満足をした。



「……っ、ひっく…」



そして今更気づく。


美保が泣いていたことに。






「っ、ごめん!ごめん、美保!!」



慌てて美保から離れて謝る俺は



下を向く美保に何度も謝った。



けど美保は


何も言わず、怒りもせず



ただ、ひたすら



泣いているだけだった。



頭が冷めた頃には



俺は美保を傷付けたこと理解し、



後悔をした。






しばらくしてから



美保がいきなり顔をあげて



鞄を持つ。



そして、何も言わず教室を出ようとする美保に



思わず声をかけた。






「美保…っ、ごめん…俺のこと軽蔑してもいい。嫌いになってもいい…ごめんな、彼氏と幸せに」



思っていない言葉を並べる。



自爆とはまさにこのことをいうのだろう。



俺は最低な男だ。



俺を見てくれないからって



美保に酷いことした。



彼氏がいる美保にキスをした。






嫌われても当然のことをしたんだ。



素直に受け止めよう。



例え、美保が俺のこと嫌いと言ってきても…



俺が悪いのだから…。



そして、もう



美保と距離を置かなければ…



だから、あんな思ってもいない言葉を並べたんだ。






…美保、いい加減気付いてくれよ。



俺、お前のこと



ずっと前から好きなんだぜ…?



ふと心の中で呟き、



美保よりも先に鞄を持って教室を出た。






楸の背中の後を見つめたまま、私はへなへなと床に崩れ落ちた。



バクッバクッバクッ…



まだ胸の高まりは収まらず、



それどころかさっきより増すドキドキ。



…楸、なんであんなことしたの?






ねぇ、楸…



楸の気持ちがわからないよ…。



「…ぐすっ」



涙が止んで、冷静にでもどこか少し混乱している頭の中。




ねぇ、今のはなんだったの?



なんであんなに悲しい顔で私のことを見るの?



…もしかして楸は、私と同じ気持ちなの?