「やはり、この城は他とは違いますなぁ」
「当然でしょう? “死神城”を除けば、この“ヴァンパイア城”が一番ですわ」
魔界の最果てに位置する城の中。
入り口の門を潜ると、魔界にいるとは思えない程の煌びやかなシャンデリアが、十メートル四方もある大ホールの天井にいくつも吊るされている。
その大ホールには、燕尾服やドレスに身を包み、楽し気にワインを口にする貴族たちで溢れ返っていた。
ここにいる貴族たちは皆、悪魔や吸血鬼であり、上流階級の位にある者だ。
姿は人間と何ら変わらない。
ただ、耳が異様に鋭く、肌の色が薄い。
口許の端から見える隠れた鋭利な牙が、悪魔という証拠だけ。
人間の世界に降り、騙し、喰らうために、似せた姿をしている説があるが、真意は分からない……。
そんな悪魔貴族たちが、一年に一度開かれる催しのため、遠征からわざわざ出席してくる。
目的は二つ……。
『人狩り』という名の催しと──、
「おぉ……エルヴィン様。今日もいつになくお美しい……」
「よ、良ければ、この後一曲踊って頂けませんか?」