「桐里が成長していく過程を見られず…

身が焦がれてしまいそうだった」


「お父様…

私はお父様に生きている間に

顔を見られて心が満たされています」


会談を終えた父の大きな掌が軽く頭に手を置いて、


「…霧里にも、

桐里をみせてあげたかった」


「え…、

それはどういうことですか…、

お母様は生きているのでは…?」


辛さを堪えて笑ったのです。


「お前が秋良に奪われた後、

すぐに病気で侵されて天国に逝ってしまった」


ようやく気づきました。


宗十郎様や菊乃丞様は嘘がお上手なのですね。


売れている役者ですから…。