太夫が露店の前で立ち止まって、 金魚をつついている。 「可愛いです…」 人が多い分太夫が目立たぬ と思ったのだが、 世間知らずの霧里で打ち消されてしまった。 「ありゃ、葵屋のとこの太夫じゃねえのか」 「ほんとだ…」 「天女みてえだ」 「うぶな娘っ子が太夫…。 お上の目に留まれば側室も夢じゃねえぞ」 回りを見ていない太夫は 金魚と遊んでいるし、 子供らしい笑顔を見せられていて 注意の仕様がない。