初老が座敷に足を延ばしなさり、


「ようやく遊女の自覚を持ったと聞いた」


ぽっかりと空いた心に気付いてくれた秋良様が

私の頬を撫でて、


「宗十郎は遊女と情を交わすことが当たり前だ。

恋など泡のように消える。

お前は儂しかおらぬ」


「…あの方は私に惚れてくれたと…」



「言葉遊びのようなものだ。

人間など、計算し卑怯で卑劣で

お前の純粋を穢す。


あの男は役者」



「…はい」