「菊乃丞様、本日の客入りに
花街一帯の花魁らがこぞって参ってきます」
男二人顔を見合わせて、
予感が外れることを神仏に願うべきなのか。
夢は長引かせてもいい…。
幸を無知な娘に、
味あわせてあせたいと思う。
「…葵屋もか」
「ええ」
衣裳に腕を通し仕立てたばかりの着物は固く、
不安と願望が入り混じり、
あやふやな雰囲気のまま一日を過ごすだろう。
郭の蝶たちが桐島園に来ることが無かった
というわけではなかった。
半年に1度や2度に男に買われる女たちは、
自由を求めて日を心待ちにしていると聞いた。
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