「霧里は霧里のままでいてくれ。

もう一度言う、俺の心はお前のものだ」


唇が触れあわせた霧里は泣き虫でも、

辛さからくるものではないと教えてくれた。



「私の心と交換です」



大よそ、秋良さんは分かっていた。

俺が太夫に心を盗まれることを。



「薬はどれぐらい持つ」

「大体、四刻ほどだ」


「…霧里、耐えられるか?」


頷く女も限界だと

抱きしめあっていた力がなくなり項垂れる。

柔らかい匂いに誘われてしまうことのないように。