―――



最後の言葉は何だったのだろうと頭で浮かばせながら、

俺と菊乃丞が町を歩くのは目立ってしまうが、

葵屋はそれを目当てにしている。


真ん中を歩いていた太夫の美しさに


目を奪われてしまう人は立ち止まる。


「…町の風景はこういうものなのですね…。

宗十郎様の言う通りお外は青くて陽があります」


鼻詰まった声で言葉を吐いた霧里が

一筋の涙を流してしまっていたのは

ようやく遊女であると分かったようで、

否定できない自分が悔しかった。



「…霧里…私の心は霧里のものだ」



一間を置いて、女はこういった。