屋敷の人形でいなくてはならないのだと

思わされてしまったのです。



「散茶や座敷持までも心を奪う宗十郎様を見ているようで


…なんだか切なかったです」




「……霧里…」


着物を整えて、

座り直し頭を下げました。


「ありがとうございました、

葵屋に戻らせていただきます。


一時の夢は醒めなくてはなりません」



「…今夜も参ろう、

私と菊乃丞で」


「はい、おいでくださいませ」