「霧里太夫」 菊乃丞が呼ぶに、意思と反し直ぐさに 霧里の場所へと移動して抱きしめた。 「いくらお前でも…、霧里を見せられない」 舌打ちをついた、不服の男は太夫の傍に向かって、 俺から引きはがした。 「っ!!?」 震えあがる女を菊乃丞が魅入り、 その手を放したんだ。 「…真珠のようだ…なるほど…、葵屋も隠したくはなる」 「あ、あの…宗十郎様…」 「この男は、菊乃丞だ。 悪役ばかりをする男だが、人一倍正義感が強い」