顔をしかめた仲間はふてぶてしそうに

後ろ姿の霧里を見つめた。


「葵屋のことを調べてみるつもりだ。

あの太夫の素性が知れない」



「…俺は知っている。教えてくれた」


「何だと」



主に悪役を引き受ける菊乃丞だが、


顔だちで俺と同等の人気を誇る役者が睨むだけで迫力はある…。



しかし、


「太夫を守るのは俺だ」


「は?お前、自分で何を言っているか分かっているのか」


「知っている。遊女を手にはできないことぐらい」


欲しいものに触れてほしくはないものだ。